筋膜とは、筋肉を包んでいる膜のことです。体全体に張り巡らされていて、金繊維や内臓、神経ともつながっているので、第2の骨格と呼ばれることもあります。
今回はこの筋膜リリースの説明と、筋膜リリースに効果的な、フォームローラーについて解説します。
筋膜とは
筋膜について、冒頭で簡単に説明しましたが、この筋膜は浅筋膜(せんきんまく)、深筋膜(しんきんまく)、筋外膜(きんがいまく)、筋周膜(きんしゅうまく)、筋内膜(きんないまく)という5つの層でできています。さらに、それぞれの筋膜が互いに滑るように動くという、複雑な構造になっています。
筋膜は筋肉を保護すると同時に、筋肉が収縮した際は滑りをよくし、血管や神経、リンパ管などをささえる作用もあります。筋内膜以外の筋膜は、コラーゲン繊維とエラスチン繊維でできており、この2つは互いに体の形を矯正する役目も担っているのです。
筋膜が正常な状態でないと、水溶性の基質がドロドロになり、筋膜が滑らかに動かなくなります。こうなると、筋膜を通っている血管や神経、リンパ管などが圧迫されるので、循環系に異常が起きるようになります。
筋膜リリースとは
左右のバランスの悪い運動を続けたり、同じ姿勢を取り続けていると、体がアンバランスになり筋膜が圧迫されるようになります。こうなると、筋膜にゆがみやよじれが起きて、筋膜が滑らかに動かなくなっていまいます。
怪我をした場合も同様のことが起きます。
その結果、コラーゲン繊維とエラスチン繊維がよじれて、ほどけなくなってしまうのです。このような状態が、体の一部分で起こっても健康に影響が出てしまいますが、筋膜は体全体に広がっているので、全身に動きの悪さが伝わってさまざまな障害を起こします。
そのため、痛みが生じたり筋肉の柔軟性が落ちてしまいます。こうなると、仕事や日常生活にも影響が出るようになります。筋膜リリースは、このような筋膜のゆがみやねじれを取って、正常な状態にするものです。
筋膜リリースは、一見するとストレッチにも似ていますが、ストレッチが体の一方向に伸ばすのに対して、筋膜リリースは5つある筋膜の層を、いろんな方向にほぐして改善していきます。
筋膜リリースの効果
本当は、理学療法士などの医療従事者が、筋膜リリースを実施するのがベストなのですが、筋膜リリースは自分で行うこともできます。日常的に、体のアンバランスな使い方をしたために起こる肩や首の凝り、腰痛、むくみといった筋膜の症状には、自分で筋膜リリースを実施すればかなり改善することが可能です。
このように、筋肉リリースは自分でも行える場合が多いのですが、癌や開放創(皮膚の開いた傷)、縫合部があったり、感染症などがある場合はおすすめできません。
また、ある程度筋膜リリースを実施しても、症状が改善しない場合は、他の病気が併発している可能性も考えられます。こういった状況では、自分で筋膜リリースを続けるのは危険が伴うので、一旦中断して医師の判断を仰ぐようにしましょう。
筋膜リリースの方法
筋膜リリースは、固まったコラーゲン繊維と、エラスチン繊維を解きほぐすものです。そのため、筋膜リリースは自分の体の固い部分を見つけて、ゆっくり深呼吸しながらほぐしていきます。
ただし、この2つの繊維がほぐれるまでには、かなりの時間がかかるので、傷みが出ないように少しずつ伸ばしていく必要があります。
また、筋膜リリースは、猫背や肩こり、二重あごの改善にも有効なので、これらの症状で悩んでいる人にもおすすめです。
筋膜リリースは、以下の手順で行います。
- (1)まず椅子に座り、背筋を伸ばして肩甲骨を前に出すように、両手を肩の高さで前に伸ばしましょう。この状態で20秒数えてください。
- (2)次に、両腕を下げないように、両肘を後ろに引いてさらに20秒数えましょう。
- (3)今度は肘の高さを維持したまま、両手のひらを前に向けて、肘から上の部分を上にあげてください。上げたら20秒数えてください。
ここまでの動作を繰り返し行うことにより、筋膜リリースが実施できます。
フォームローラーを使う
筋膜リリースは、筒状のフォームローラーを使えば効率的に行えます。体の凝り固まった部分に、フォームローラーを当てて筋膜をほぐしましょう。
まず、フォームローラーを床に置いて、その上に体を重ねます。フォームローラーを当てた部分を、体の重みで圧迫した状態で、その部分につながる関節を前後左右に動かしましょう。
この方法を、フォームローラーを当てる箇所1つにつき、1分くらい実施してください。このように、フォームローラーを活用すると、筋膜リリースが簡単にできるようになります。
フォームローラーとは?
フォームローラーは、筋膜リリースに使われる補助具の一種で、筋膜を正常に整えるための器具です。フォームローラーの上に腰や太ももなど、凝りのある部位を乗せて体重をかけてみましょう。
この動作で筋膜が動いてはがれるので、血行が改善されて体の凝りがほぐれていきます。
このように、フォームローラーを使えば、デスクワークやパソコン仕事、家事、育児などで凝った体をほぐすことができますl。
筋膜リリースの実際
人間の体は複雑で、左足首の異常が原因で右肩に症状が現れることがあります。右肩に症状が出れば、多くの場合右肩に何らかの施術をして改善しようとするでしょう。
しかし、本来の原因は左足首にあるのですから、左足首以外のどの部分をどうしようとも、治るはずはないのです。
このように、体の異常の根本原因が、思わぬ場所に潜んでいる場合もあるので、筋肉リリースによるケアを体全体に実施することが必要です。
つまり、異常が発生した部分にとらわれず、普段から体全体のバランスを取る必要があるということです。
フォームローラーが見直される
少し前まで、フォームローラーはタイムを追求するような、トップクラスのアスリートだけが使うものと思われていました。しかし、最近ではデスクワークや、育児などで凝り固まった体をほぐすために、筋膜リリースが効果を発揮することがわかってきたので、フォームローラーの実用性が見直されるようになりました。
フォームローラーを使うと、固くなった筋膜を一度はがして、もとの柔らかい筋膜に戻してくれます。
このように、フォームローラーを使うと、肩こりや首こりの改善、腰痛の緩和、身体の凝りが気になる部分の緩和、筋肉の可動域向上などに効果があります。
フォームローラーの選び方
フォームローラーは、サイズや形、素材などがいろいろあるので、その中から自分に合うものを選ばなくてはなりません。
初めてフォームローラーを使うのであれば、長さ30センチのものを使うのがおすすめです。
なぜなら、30センチのタイプが一番汎用性があるからです。
このタイプなら肩甲骨やふくらはぎ、太ももなど、多くの人が凝りを感じる部分に使うのに適しています。しかも、このサイズならコンパクトなので、カバンに入れて持ち運ぶのにも便利です。
まとめ
筋膜とは、筋肉を包んでいる膜のことです。この筋膜がアンバランスな生活や仕事などで、少しずつゆがんでくると、さまざまな障害を引き起こします。
筋膜の障害は、筋膜リリースによて改善することができます。筋膜リリースは、猫背や肩こり、二重あごの改善にも有効なので、これらの症状で悩んでいる人にもおすすめです。
また、筋膜リリースの効果を高めるフォームローラーもあるので、試してみるといいでしょう。